2016年11月24日木曜日

薩摩焼

薩摩焼について

薩摩焼の定義

薩摩焼には、「金襴手薩摩」、「白薩摩」、「黒薩摩」などがあります。
そこで、「薩摩焼」とする焼き物については、渡辺芳郎氏が以下のように述べています。

 「このように、一口に「薩摩焼」といってもその内容はさまざまであり、その多彩さが薩摩焼の特色の一つとなっています。ですから製品の内容から薩摩焼を定義することはできません。ここでは、江戸時代については薩摩藩領(鹿児島県全域と宮崎県南部)で焼かれた陶磁器、近代については鹿児島県内で焼かれた陶磁器を、薩摩焼と呼びます。」(渡辺芳郎 2003, p.82)

本サイトにおいて薩摩焼の定義はこれに従っています。

鹿児島には都内から長距離ドライブで2度訪れているのですが、黒千代香(くろじょか。黒色陶器の伝統的な酒器で、胴部が偏平な土瓶。下の写真です。)とぐい呑みで焼酎をいただき、つけ揚げ(さつま揚げの鹿児島での呼び名)とキビナゴの刺身等々食しました。
ぜひまた行きたいですね~。

下の写真の黒千代香は「黒茶家」と共箱に表記されています。こちらの表記もあります。また、平仮名で「くろぢょか」とも表記されます。「茶」と「千代香」の平仮名を考えると「じ」よりも「ぢ」のほうがしっくりくると思います。

黒茶家(くろぢょか)。龍門司焼(黒薩摩)。
黒茶家(くろぢょか)。龍門司焼(黒薩摩)。

窯業の始まり

島津家17代藩主の島津義弘(1535~1619。85歳。戦国時代、安土桃山時代、江戸時代と、ご長寿。)が、文禄・慶長の役(1592~1598)の慶長3年(1598)頃、約80人の朝鮮人陶業関係者を連れてきたことから始まっています。
朝鮮からの船は、現在の鹿児島市喜入前之浜町、串木野市島平、日置市東市来町神之川の3地点に漂着し、それぞれの場所で窯が築かれました。

窯場

・竪野系
・苗代川系
・龍門司系
・元立院系
・薩摩磁器系
・能野系
と近世(江戸時代)の薩摩焼の窯場は6系統に分かれています。(2017.1.6加筆)

時期分け

おおむね3期に分けると薩摩焼の変遷を理解しやすいとの事で、短くまとめました。

第1期
慶長3年(1598)頃、窯の開始~1600年代後半(17世紀代後半)の安土桃山時代末~江戸時代前期。
茶道具の生産と販路拡大。

第2期
1700年代(18世紀代)の江戸時代中期。
白濁釉・黒釉を使用し、主に在地向けの生産。

第3期
1700年代末(18世紀代末)の江戸時代後期。
上絵付けの技法、磁器生産、製品の高級化、さらなる販路拡大。

そして、明治維新を経て海外への販路拡大へと続いていきます。



薩摩焼の窯場1

竪野系・苗代川系・龍門司系・元立院系・薩摩磁器系・能野系

近世(江戸時代)の薩摩焼の窯場は6系統存在します。(5系統から6系統に11.28修正。2017.1.6追記。)

竪野系の窯場

竪野系の窯は薩摩藩の藩窯(御用窯)、製品はいわゆる白薩摩とよばれる白色陶胎の陶器が主で、藩関係者用の製品を焼いていました。
窯は、慶長11年(1606)、現在の姶良市鍋倉に宇都窯が築かれました。窯跡は平成14年に県指定史跡になっています。窯を開いたのは朝鮮からの陶工で金海(キメ。日本名:星山仲次)であると伝えられ、市指定史跡である島津義弘居館跡(御屋地跡)の北西約300mに位置し、義弘好みの茶道具を焼いて(古帖佐焼)いました。

宇都窯

単室の登り窯で、1号窯が長さ約5.8m、2号窯が長さ約4.5m、3号窯が長さ約6.3mです。
現存する薩摩焼の窯では最古で、発掘調査により窯の形態から2期に分かれることが判明しています。
1期(古い方)の窯跡は、日本国内に類例のない特殊な構造となっていました。

御里窯

慶長12年(1607)島津義弘が、加治木城に入る予定を幕府に禁じられたため、現在の姶良市加治木町仮屋町に居館(加治木島津屋形跡。市指定史跡。)を定め、移転しています。
それに伴い金海も移り、居館の北西に御里窯(おさとがま。市指定史跡。)を開き茶入れを主に焼いています。いわゆる古薩摩の一部は、この御里窯で焼かれたと推定されています。
元和5年(1619)島津義弘が没します。

冷水窯

島津忠恒(後に家久と改名。初代薩摩藩主。島津義弘の子供)が鶴丸城(鹿児島城)に移り、冷水窯を開きます。
窯は長さ約14.5mで連房式登り窯でした。
発掘調査によって明らかになった主な製品は、茶道具・碗・皿・土瓶・仏具等ですが、型打ち成形により製作された、丁寧な作りのデザイン性が高い皿や鉢が注目されています。また、胎土は純白の白色土でした(2014)。
黒茶家の底部と蓋
黒茶家の底部と蓋

次回は苗代川系の窯です。こちらからどうぞ。








参考文献 : 調査課第一調査係 2014 「収蔵遺物保存活用化事業-竪野(冷水)窯跡の再整理を中心に-」『研究紀要・年報 縄文の森から 第7号』,鹿児島県立埋蔵文化財センター
     : 佐々木秀憲 2000 『産地別 すぐわかるやきものの見わけ方』, 株式会社東京美術
     : 沈 壽官・久光良城 1986 『薩摩 日本のやきもの 1』, 株式会社淡交社
     : 日本歴史大辞典編集委員会 1973 『日本史年表』, 株式会社河出書房新社
     : 矢部良明・水尾比呂志・岡村吉右衛門 1992 『日本のやきもの8 薩摩・民窯』, 株式会社講談社
     : 渡辺芳郎 2003 『日本のやきもの 薩摩』, 株式会社淡交社
 参考H.P. : 姶良市デジタルミュージアム
管理者 : Masa
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