2017年4月1日土曜日

福井県の焼き物

越前焼

越前焼 鳥紋壷
越前焼 鳥紋壷

上の写真は、現代の越前焼の作家さんによる壷です。この壷の器面の手触りは滑らかで上品な作りです。
越前焼 鳥紋壷の口縁部。端正な作りです。
越前焼 鳥紋壷の口縁部。端正な作りです。

はじめに

越前焼の名称が定着したのは昭和22年(1947)以降のことで、それまでは地名から「織田焼」と呼ばれていたようです。
ちなみに、明治18年(1885)の五品共進会で、越前では小曽原村(現在の福井県丹生郡越前町小曽原)の窯元「越前焼」の名が出ています。

日本六古窯

越前焼は日本六古窯の一つです。中世からの窯場として古くは、瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前の五古窯が知られていました。昭和17年(1942)以降に陶磁器研究家の研究成果により、越前焼が六番目の古窯として認められ、六古窯が世に知られていきました。
ちなみに六古窯とは、中世以降から継続する日本伝統の焼き物の窯が条件となっています。美濃はあまりに有名なので除かれています。

越前焼の所在地

福井県丹生郡越前町とその周辺に所在します。
越前町は平成17年(2005)に、福井県丹生郡の旧越前町、織田町、朝日町、宮崎村が合併して新しい越前町となりました。新設合併です。ちなみに南に隣接するのは越前市です。同じ名称で町と市が存在し隣接するのは珍しいですね。

越前焼の始まり

平安時代末期(12世紀代後半)に小曽原で、須恵器(古代の焼き物)を焼いていた人々が、愛知県の猿投窯(日本最大の古窯跡群)からの新しい技法(灰釉陶器)を導入して、「古越前」と呼ばれる越前焼を作り出していったと考えられています。
また、同じ頃に愛知県常滑窯の焼き物の技術が導入されたとも考えられています。



古越前

鎌倉時代から桃山時代(12世紀末から17世紀初め)の越前窯製品で、成形は粘土紐巻き上げ技法(ねじ立て)です。
北海道から島根県にかけての日本海沿岸の室町時代の遺跡からは、古越前が出土しています。広い地域で越前窯製品が流通していた証です。このことから、盛期は室町時代にあったことがわかります。
焼かれていた器種は、甕・壷・すり鉢が主で大量に生産されていました。釉薬は掛けずに焼き締めて、自然釉が掛かるものが多いです。
鎌倉時代の製品は、常滑窯製品との区別が外見では難しいものがあります。これが常滑窯から分かれて越前窯製品が作り出されたとされている根拠でした。しかし、常滑窯でのみ焼かれていたとされていた三筋壷(平行な三本の横筋を胴部に描いた壷)が越前焼の窯からも出土しました。その壷の口縁部の造りが常滑窯のものとは異なっていて、猿投窯の製品のものと類似していたのです。このことから、常滑窯から越前は分かれたという説が崩れています。
なお、常滑窯製品との区別として、越前焼の甕・壷では内面の粘土紐巻き上げ痕を丁寧に撫でて整形していることから、粗い整形の常滑焼との区別が出来るとしています。

古越前の後

江戸時代になると瀬戸・美濃焼などの施釉陶器にその座を奪われ、生産規模が縮小し衰退していきましたが、雑器などを焼きながら存続します。
他藩の窯では新しく渡来人や陶工を招いて窯を開き、御用窯などになり藩の庇護で盛んとなっていくのとは違います。古くから続く焼き物が衰退するのは仕方がないとしていたのでしょうか。

明治時代では隣県である石川県の九谷、ライバルであった?瀬戸・信楽などから陶工を招いて、色絵の陶器と磁器の生産を行っています。
明治39年(1906)には「福井県陶磁器徒弟養成所」が開設されています。
しかし、明治時代の終わりには、導入した新しい技法での窯が終わってしまいます。釉薬ののりが良くない越前の土だったせいでしょうか?
これらの製品にお目にかかったことが無いので、今後の調査課題とします。

その後は、茶陶器などの製品が少なかったため、民芸運動の影響を受けず窯業は盛り上がらずにいました。
しかし、昭和46年(1971)に「越前陶芸村」が建設され、「福井県陶芸館」「越前陶芸村文化交流会館」「福井県工業技術センター窯業指導所」、窯や直売所などが出来、越前焼を盛り上げています。
現在では越前焼の窯元が多くあり、色々な活動を通して窯業が栄えています。

毎年5月末の期間には、越前陶芸村で「越前陶芸まつり」が開催されます。平成29年は、5月27日(土)~29日(月)に開催される予定です。
福井県敦賀市の古い倉庫群
福井県敦賀市の古い倉庫群

過去に南の敦賀市までは行ったのですが、時間切れで越前陶芸村までは行くことが出来ませんでした。次回は本場で古越前などを堪能したいと思います。






参考文献 : 青柳栄次 1999『全国焼き物体験』,株式会社昭文社
     : 黒田一哉 1988『図鑑 日本やきもの巡り』,株式会社光芸出版
           : 芸術新潮編集部 1983『やきもの鑑定入門』,株式会社新潮社
     : 佐々木秀憲 2000『産地別 すぐわかる やきもの の見分け方』,株式会社東京美術
     : 清水元彦 1997『九谷・越前・丹波・およびその周辺』,株式会社リブロポート
     : 楢崎彰一 1976『日本の美術 43 瀬戸・備前・珠洲』,株式会社小学館
     : 成美堂出版編集部 2004『やきものの事典』, 成美堂出版
             : 日本歴史大辞典編集委員会 1973『日本史年表』, 株式会社河出書房新社
     : 真尾 栄 1996『九谷・越前やきもの紀行』,主婦と生活社
             : 矢部良明 1992 『日本やきもの史入門』株式会社新潮社
             : 矢部良明・水尾比呂志・岡村吉右衛門 1992『日本のやきもの8 薩摩・民窯』, 株式会社講談社
管理者 : Masa
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